2020.10.26

会社の財務分析の順序

初めての会社を財務分析するとき、財務諸表(主にB/S、P/L)をどのように見ているのか?と聞かれると、次のように私は見ています。

①短期的視点からの分析 → ②収益性の分析 → ③長期的視点からの分析

まず、短期的視点で会社の財務諸表に問題があれば、近い将来キャッシュがショートしてしまう可能性が高いです。キャッシュのショートを避けるために、もし財務諸表の短期的視点で問題があれば、真っ先にこの問題を解決する必要があります。最後の長期的視点からの分析は、毎期の利益の積み重ねで良し悪しが決まってきます。だからこそ短期的視点と長期的視点の間に収益性の分析を入れてます。

①短期的財務安全性の分析(B/Sから分析)

■流動比率(%):流動資産÷流動負債×100

1年以内に返済義務がある流動負債に対し、現預金及び1年以内に回収予定の流動資産がどの程度あるのかを示す指標です。200%以上あれば健全であり、150%以上はありたいところです。逆に100%を切ると近い将来キャッシュがショートする可能性があります。

ここで気を付けたいところが、金融機関からの借り入れをB/S上全て固定負債(長期借入金)に入れている場合、正しい数字が出ません。借入金の内1年以内に返済する借入金は流動負債に計上しておく必要があります。

■当座比率(%):当座資産(現預金、受取手形、売掛金)÷流動負債×100

流動比率でも短期的視点の分析はできるのですが、欠点もあります。過剰在庫をかかえていても流動比率が良い数字がでる可能性があります。この過剰在庫などを除いた短期的指標が当座比率で、100%以上あれば問題がなく、150%以上あれま優良企業といえます。

短期的財務安全性で問題があれば、資金調達を真っ先に考えます。簡単に言えば金融機関からの借り入れによる当面の資金の確保です。借入額はなるべく多く、また返済期間はできる限り長期にし、まずは会社の財務改善をしていくための時間を稼ぐ必要があります。

②収益的分析(P/L、B/Sから分析)

■総資産利益率(ROA)%:当期純利益÷総資産×100

ROAは、会社の資産をどの程度効率的に利用して利益を生み出しているかを示す指標です。ROAを分析するとき、同業他社との数値と比較する必要があり、業種によっても違いますが、5%以上あると良好、10%以上で優良とみています。この数値が悪い場合、無駄な固定資産がないか?もしあれば売却などを考える、売上代金の回収が遅くないか?遅い場合、少し値引きしてでも回収を早くするなどの改善を考えます。

■自己資本利益率(ROE)%:当期純利益÷純資産(自己資本)×100

ROEは、会社の自己資本をどの程度効率的に運用して利益を生み出しているかを示す指標です。ROEについても、同業他社との数値と比較する必要があり、業種によっても違いますが、10%以上あると優良といえます。逆に5%に満たない場合、売上高に対する当期純利益の割合が悪い可能性があります。

■売上高経常利益率(%):経常利益÷売上高×100

会社の売上高に対して経常利益がどの程度残るのかを示しす指標です。業種によっても違いますが、10%程度が優良企業といえますので、その数値を目指して欲しいです。

■損益分岐点:固定費÷限界利益率

損益が黒字に転換するポイントの売上高を示す指標です。

売上高経常利益率、損益分岐点売上を改善するには基本的に4つしかありません。売り上げる商品の個数を増やすか?、商品1個当たりの売上単価を上げるか?、売上原価を下げるか?、固定費を削減するか?この4つの何を改善するか?後は、どの組み合わせで改善するか?を会社は選択しなければなりません。

③長期的財務安全性の分析(B/Sから分析)

■自己資本比率(%):純資産(自己資本)÷総資産×100

自己資本比率は、長期的な会社の安全性を見る基本的な分析指標です。業種によっても違いますが中小企業の平均の自己資本比率が40%と言われています。70%を超えるとほぼ無借金経営の会社であり、私見的には50%以上の自己資本比率を目指してほしいです。逆に無借金経営が良いのかといわれると・・・難しいところです。無借金経営は会社の安全性が高いと言えますが、自己資本以上の規模で経営しようとすると、金融機関からの借入は必須になってきますので・・・。

■固定比率(%):固定資産÷純資産(自己資本)×100

会社の固定資産を自己資産で購入できているのかを見る指標です。例えば自己資本が2,000万円で固定資産が5,000万円の場合、3,000万円(固定資産5,000万円-自己資本2,000万円)を借入でカバーしていることになります。100%を切っていれば、会社の固定資産のすべてを自己資本で購入できているといえ安全性が高いといえますが、中小企業が固定資産の全てを自己資本で購入できている場合は少なく、次の固定長期適合率でみると安全性を正確に測れます。

■固定長期適合率(%):固定資産÷(自己資本+固定負債)×100

固定資産の購入は、返済の必要ない自己資本と長期の借入金で賄われるべきです。固定長期適合率が100%以下であれば健全な投資ができていることになります。逆に100%を超えている場合、短期的な資金が固定資産の購入に回っている可能性があり資金繰りが危うい可能性があります。

他にも指標は様々あります。例えば金融機関からの借入金の適正値や、損益安全余裕率など大事な指標がありますが、私が簡単に会社の財務諸表を分析するとき、上記の分析から始めています。